在タイ50年のベテラン女社長 日本の若者へ「外から日本を見てほしい」とエール

「あけましておめでとうございます!生きてたのね」。張りのある女性の声がいたずらっぽく電話口に語りかける。CJLトラベルサービスの智英子・サタヤユットさんは旅行業界に携わって34年のベテラン女社長。30数年来の馴染み客も多く、近況を語り合うお客さんとのやり取りは、まるで旧友と話しているかのようだ。


 タイ人男性との結婚を機に22歳の時、来タイ。東京オリンピックの前年、1963年だった。当時住んでいたトンブリーでは、タイ人男性も女性もサロンを身に付け、裸足で歩いている人が多かった。街中には用水路がたくさんあり、船が往来する情緒ある景色が広がっていたという。


 智英子さんはタイで、建設会社や広告代理店などに在籍後、38歳の時に旅行会社に勤め始めた。自分なりの考えで仕事が進めることができ、やればやるほど実績が上がるのが楽しくて仕事にのめりこんでいった。

 

幼いころ、占い師に運勢をみてもらい、「あなたは死ぬまで仕事をする」と言われたことがあった。旅行会社に勤めるようになり、「これなら一生できる」と感じたという。

 

退職までの23年間を同じ会社で勤め上げ、「元気な間はずっと仕事をしたい」と10年前に独立してCJLトラベルサービスを立ち上げた。「『智英子さんなら80歳までやれるよ』と馴染み客に声をかけられ、元気付けられています」とほほえむ。実際、実年齢より若く見え、張りのある声はさらに若く聞こえる。

 

 智英子さんのもとには、旅行に関することだけでなく、タイでの起業のことや投資のこと、恋愛のことなど人生相談に訪れる人も多い。実際に仲を取り持って、結婚に発展したカップルもいるという。「儲けなくてもいろんな人と知り合って話ができる。それが楽しいんですよ。仕事があったから私自身今までやってこられた」と智英子さん。

 

 来年、智英子さんは在タイ50年を迎える。「あっという間で信じられない。もうタイ人ですよ」と語り、現在は孫もいる身だ。長女が会社を手伝ってくれており、遠方に住む長男からは毎日智英子さんのもとに電話がくる。「タイの子供たちは本当に親孝行。親子の絆がすごく強くて幸せです」。

 

 生まれ故郷の徳島のことや、幼い時に弟たちと遊んだことを思い出すこともある。これから日本がどうなるか心配になる時もある。今後ますますアジアが発展することを感じ、「若い時に世界を見て歩くのが大切。外から日本を見てほしい」と、日本人の若者に向けてのエールをおくっている。

 

 

2012年1月5日 タイ自由ランド掲載