タイの最大の観光資源はタイ人のホスピタリティ

鹿野健太郎さん、39歳
東京都世田谷区生まれ
東京外国語大学外国語学部でタイ語を専攻。タイ国立チュラロンコーン大学文学部への留学、東京外国語大学大学院博士後期課程を単位取得退学
2005年TAT・タイ国政府観光庁(バンコク本部)に日本市場アドバイザーとして入所
TATでの職務の他に、大学での観光・比較文化関連の講義、映画字幕、日本語ナレーションなどにも携わっている。

ビジネスとしての旅行業にとどまらず、人々の生活にとって旅行が持つ意義を提案しているタイ国政府観光庁(ＴＡＴバンコク本部)日本市場アドバイザー鹿野健太郎さん（39歳）。
　大学でタイ語を専攻した時に、タイと運命を共にする意思を固めたという。20年前という時代を考えると、大胆な発想である。今でこそタイ語を学ぶ人は多いが、当時はかなりマイナーな存在で、将来の展望も見えにくかったという。
　鹿野さんは、タイ語を学ぶ前には、一度もタイに行ったことがなかったというが、タイ語を選んだ理由は、これからはアジアの時代と言われていたから、また他の人と違う事をするのが好きだったから、といった、人生を決める大きな決断の割には、やや漠然としたきっかけであったようだ。
　タイについて学び始め、タイに長く関われば長所だけではなく短所もいっぱい見えてくるが、そこからがいわばタイとの本当の付き合い。今までこの国の人たちに沢山のことを教えてもらった恩返しとして、この国の役に立ちたいと考えた鹿野さん。タイ国立チュラロンコーン大学文学部へ留学、東京外国語大学大学院博士後期課程を単位取得退学し、２００５年よりにＴＡＴに勤務している。
　ＴＡＴでの職務の他にも、大学での観光・比較文化関連の講義、映画字幕、日本語ナレーションなどに携わっていて、まさに日本とタイをまたにかけた活躍をしている。この春インラック首相が来日した際には、首相とＪＡＴＡ（日本旅行業協会）の代表との会談で通訳も務めた。
　鹿野さんは、「どこへ行くか」から「何をしに行くか」という方向に旅行業界は、マーケティングをシフトさせ、旅の目的である現地での「実体験」に、スポットライトを当ててゆくべきという。
　旧所名跡や風光明媚な観光地を訪れる「点と線」の旅ではなく、貴重な「実体験」が、自分への投資につながる様な旅が、若者の旅行離れと言われる現代、新たな需要を掘り起こすカギだ。
　今はインターネットで海外の詳細な情報が簡単に手に入る便利な時代。しかしブログの旅行記などで他人の体験や感想を読み、写真や動画を見て、さも自分も同じ体験したような気分で満足してしまうのは、もったいないと鹿野さんはいう。自身の体験も踏まえ「特に若い世代には、海外を旅する機会をぜひ持って欲しい」と語った。

鹿野さんは、「旅行の持つ意義は、個人の楽しみにとどまらない。なぜ若い世代に勧めたいのかといえば、海外に身を置くことで、自己を客観的に観察する能力と他者を理解しようとする寛容性を高める事ができるから」という。さらに「天然資源に乏しく人口も減少傾向にある日本が、外国との交流に明るい未来の活路を見出す為には、若い世代にこうした経験が欠かせない」と続けた。
　鹿野さんの言葉には、社会における旅行の位置付けという大きな視点があり、旅行というものの意義を、改めて考えさせられた。
　観光が基幹産業のひとつであるタイにとって、時代や環境の変化と共に変わってゆく旅のトレンドへの対応は、重要なテーマだ。また観光客誘致に力を入れ始めた近隣諸国との差別化には、タイだからこそと言えるタイのブランド力強化が不可欠といえる。
　公私を通じタイという国の様々な姿を見てきた鹿野さんに、タイの一番のアピールポイントを聞いた。
　答えは「人」。タイ人のホスピタリティこそが、今も昔もタイの一番の魅力であり、同時に最大の観光資源でもあるという。時代により旅のトレンドやスタイルは変わっても、その魅力は、これからも変わらずにいて欲しいものだ。

タイの最大の観光資源は タイ人のホスピタリティ

タイの最大の観光資源はタイ人のホスピタリティ