ミャンマー人の勤勉さと実務能力に驚く

バンコクからミャンマーのヤンゴンまでは、飛行機で１時間という近さ。しかし長期にわたる軍事独裁政権、民主化運動への弾圧、アウン・サン・スー・チー女史の軟禁、欧米諸国からの経済制裁など、ミャンマーは、国際的に負のイメージで語られることが多く、タイから見ても、近くて遠い謎めいた国という印象が強かった。

　しかし今ミャンマーは、歴史的な転換期を迎えている。昨年春に就任したテイン・セイン大統領は、民主化へ向け大きく舵を切った。アメリカのクリントン国務長官は昨年11月にミャンマーを訪問。本格的な経済制裁解除に向けての準備が進行している。天然ガス・レアメタルなど資源の宝庫であり、インド・東南アジア・中国を結ぶ重要な地点にあるミャンマーが開かれるとなれば、否応なしに世界から注目を浴び、各国が様々な形でミャンマーへアプローチしている。

　４月21日には、日本の野田首相とテイン・セイン大統領の会談が行われ、日本は凍結している円借款を25年ぶりに再開する意向を示した。ヤンゴン郊外のティラワ港経済特別区は、ミャンマー政府が日本に開発を委ねる方針を表明している。

　ＪＩＣＡの齋藤克義ミャンマー事務所次長は、現在ミャンマーでは、３年前の就任当時からは、想像も出来ないほどの目まぐるしい変化が進行中であるという。この変革期に対応しＪＩＣＡは、インフラ整備、人材育成など、より一層の支援活動を進めミャンマーの民主化の流れをバックアップして行く。　

　ミャンマーが世界に市場を開く中で、ミャンマーに進出、または興味を抱く日本企業が増えるのは、自然の流れといえる。またアジア最安という人件費は、生産拠点として最大のメリットだ。ミャンマーの一般的な月額平均賃金は、約５千円でベトナムの３分の１程度。タイでは先月、賃金引き上げが、行われたが、それをきっかけにミャンマーに視線を向け始めた日系企業も多い。

　全日空は12年ぶりの東京ヤンゴン路線の運航再開を年内に予定しており、再開されれば日本からミャンマーへの関心は、更に高まるであろう。

　日本のコンビニエンス・ストア大手のローソンは、タイでは見かけないが、すでにミャンマー進出を明らかにしている。年内にヤンゴンに１号店を開き、３年間で100店規模を目指すという。３月ヤンゴン市内にオープンしたショッピングセンターには、タイでもお馴染みのダイソーが出店した。

　ＤＣＲ（第一コンピューターリソース）は、ミャンマーの潜在力をいち早く見出した企業。２００８年ミャンマーＤＣＲを設立し、過去４年間で約200名のミャンマー人をＩＴ技術者に育成してきた。オフイス業務においても対応できるような人材を育成し人材アウトソーシングサービスを提供している。ミャンマーＤＣＲの取り組みは、今年３月テレビ朝日の報道ステーションで放映され反響をよんだ。

　バンコクに拠点を置くＤＣＲグループのタイＤＣＲは、ミャンマーコンシェルジュを立ち上げミャンマーへのビジネス進出をサポートしている。（本紙５ページ参照）
　タイＤＣＲの示村賢一代表取締役社長によると、ミャンマーに関する問い合わせは、タイでビジネスをしている日本人からも、増えているとのこと。ミャンマーＤＣＲには、日本やタイからの視察が絶え間なく、訪問者の多くは、ミャンマー人従業員の勤勉さと実務能力の高さに感心するという。

　驚いたことにミャンマーＤＣＲでは、朝礼から仕事上のやり取りまで、ミャンマー人も全て日本語で行っており、今後、進出する日本企業にとって、頼もしい人材となりうる。

　前途洋々のミャンマーであるが、、問題点も多い。まず電力供給の脆弱さ。停電は日常で、ミャンマーＤＣＲでは非常用電源を備えている。通信などのインフラも未熟で、進出企業にとって頭の痛いところ。オフィス、アパート、ホテル不足も深刻だ。申請審査も基準が不明瞭で、審査にかかる時間も読めない為、事業計画を立てるのが難しいという。法制度の整備も必要だ。

　歴史的にミャンマーは親日的で、日本の進出に対する期待は高い。多くの課題とリスクを抱えながらも、ミャンマーが、日本にとって魅力的なアジア最後のフロンティアである事は、疑いないだろう。

ミャンマー人の勤勉さと 実務能力に驚く

ミャンマー人の勤勉さと実務能力に驚く