高齢者のタイでのロングステイ

  タイ自由ランドの事業部でも、ロングステイのためのビザの取得や更新を行っていますが、タイに来る50歳以上の日本人は増加傾向にあるようです。


 基本的には80万バーツのお金を日本から送金して、2ヵ月ねかせておけば、ロングステイのビザが取れて、1年間過ごせます。更新の際にはまた、80万バーツをちゃんとキープして預金しておけばよい。それが、タイ政府の外国人高齢者に出すビザの条件です。


 80万バーツというと、1ヵ月当たり、65000バーツほどですが、その程度の年金を毎月、もらっている人でも、ロングステイのビザはとれます。ですから、タイ政府では、1ヵ月当たり65000バーツのお金をタイで使ってもらい、消費に貢献してもらえばタイにとっても有益なものとして、歓迎しているということです。


 しかし、定年を迎えて、年金で生涯を過ごそうという日本人にとって、「タイで生涯を」と決心する人はもちろん、「温暖な気候のところで」や「物価が安くて過ごしやすいので」などの理由で来る人も多いですが、実際に多いのは、日本でもらえる年金では日本で過ごすのは難しい、といった理由の人です。


 実際にタイに来ているロングステイの日本人で、1ヵ月65000バーツ以上の年金をもらっている人は、どれくらいの割り合いになるのでしょう。


 はじめは仕事でタイに来たという宮田さん。5年ほど働いてリタイヤし、そのまま2年間、ロングステイをしており、現在は63歳になる。


 60歳より年金をもらいだし、1ヵ月当たり4万円ほど。日本で登録しておけば、タイの住所に年1回、書類が届き、そこにサインして送り返すだけで、1年間の年金がもらえる。3ヵ月ごとに自分の預金口座に振り込まれる。だから、タイでの所在地を変えない限りは、日本に行くことなく、タイで年金が受け取れる。


 では、1ヵ月4万円ほどでタイのバンコクで過ごしていけるのか?


 宮田さんの生活は、若い人がタイに来たばかりの時に体験するような、サバイバルなものだった。まず、ラチャダーのフアイクワン駅近くのアパートを3000バーツほどで借りている。「住んでいる人はタイ人のみ。日本人を見たことがない」という。1日の食費は300バーツまでと決めており、「タイの地元の食事ばかりで、食べ飽きている」という。30日分として9000バーツ。1ヵ月の総予算は「15000バーツ」と設定している。


 「それでは4万円をオーバーしてしまいますね?」と問いかけると、足りない分は自分の預金からとりくずしているという。


 しかし、ここまで節約してタイにいることに魅力を感じるのだろうか?とも思うが、やはり「この年金では日本では到底、過ごしていけない」ということが大きいようだ。


 宮田さんは、エアコンのない部屋には昼間、いないため、毎日、外出する。趣味はタイのお寺めぐりと花の写真を撮ること。すでに今まで200以上の寺をまわったという。「チャオプラヤー川をのぞむ、あのワット・アルンのとなりにも寺があるんですよ。でもなかなか本堂が開かない。だから仏像を見られないんですよ」とにこやかに語ってくれた。そういった、限定付きで見られる仏像も楽しいという。


 タイに来ているロングステイの日本人で、このように変わった人が結構多いのに気づく。「変わった」というのは、あまり人と群れるのがきらいで、自分のやりたいことをやりたいようにしたいため、タイに来た、というような人だ。


 宮田さんも、他人からさしずされるのは嫌い。たっぷりある自分の時間を、自分が思うように使いたいと思っている。


 「将来もずっとタイですか?」と問いかけると、「もう、日本には帰るところはないからね。だから住所が変わって、日本にその住所を知らせに行くのもホテル住まいになる。死ぬまでタイだと思っている」という。


 「では、医療費の高いタイで、病気になったらたいへんじゃないですか?」と尋ねると、「だから、ホトケさまにいつもおがんでいますよ。病気にならないようにってね」と冗談っぽく笑っている。


 将来的にはチェンマイで過ごしたいというが、「バンコクよりもきっと生活費がかかる」という。「食事代は変わらないと思うけど、アパート代はきっとチェンマイの方が高い。それにさむいから温水器も必要で、最近また、電気代も上がっているからね」といい、切実な生活の断面を覗かせてくれる。


 このように節約しているロングステイの日本人が一般的であるということではないが、「日本では年金だけで生活していけない」という人がタイに来て生活しているという実態でもある。