クーポンサイトでタイに乗り込む

タイで「クーカフェ」のサイトを立ち上げたのは11月末。そして12月24日は１店目のクーポンをスタート。１０００バーツ分の食事券を399バーツで購入できるという振れ込みで売り出し、限定300人で募った。12時間で売り切れ。

　サイアム・パラゴン内にある日本料理店だが、申し込んできたのはほとんどがタイ人。サイトを運営する平松（29歳）は確かな手ごたえを感じた。

　このクーポンサイトは今、日本でも爆発的にヒットしていて、「グルーポン」の通称で呼ばれているもの。日本ではこのグルーポン社の力が強いが、タイではまだ７～８社程度がこのクーポンサイトを仕掛けているのみ。

　２店目、３店目のクーポンを売り出し、タイ人の反応は上々。クーカフェのサイトと、タイ人に人気があるフェースブック、さらにはツイッターなどとリンクさせて、タイ人の口コミ需要を刺激する方法をとっている。

　１０００バーツ分の食事を399バーツで、というのだから店側にとっても十分に利益のあるものではない。しかし、そのクーポンを持った人が食べに来てくれて、初めて利用する人が店の味にふれるきっかけにはなる。

　最近はタイでも日本料理ブームで、レストランを起こす日本人オーナーも、タイ人客を見込んでいる人は多い。

しかし、宣伝の仕方がわからずに、タイ人に知らせたいのだが、思うように広報できていない現状がある。そこでクーポンサイトを店側が利用して、タイ人客が来てくれるきっかけとして、利益にはならないがプロモーションとして試してみる、という価値があるわけだ。

　平松がタイと関わったのは10年前。バックパッカーとして来ていたころだ。そして７年前にはチュラロンコン大学で語学勉強をし、いったんは日本に戻って就職、そののち日本で起業し、価格比較サイトを運営。今年７月にはクーポンサイトのシステムを販売しはじめ、まだ、そのクーポンサイトの参入の余地があるタイへ進出しようと決断した。

　７年前、タイで遊び疲れて真夜中にタクシーで帰宅途中、酔っ払った顔をあげると窓越しに、小さな子どもが物乞いをしている姿があった。あとで聞いたところ、親に仕事がなく、子どもに物乞いをさせているのだと。

　タイでタイ人を雇用して、そういった子どもたちを救いたい、漠然とだがそういう思いを強く持って、タイで何とか事業を起こしたい、とずっと思っていた。

　そして今、念願がかなって、タイでの船出を迎えたが、このクーポンサイトについては、「グルーポンがまもなく参入してくる」という話が常に舞い込んで、きっとタイで立ち上げるのは時間の問題だろう。

　しかし、今、ＩＴ企業として世界で注目されている「グルーポン」とタイで競合できるのはすばらしいこと、名誉なことと思う。日本で養った日本のクオリティーのサービスをクーポンサイトでもしっかりやれば、ある程度は闘えるのではと思う。

　さらに、こういったタイ人客にきてもらいたいレストランとの連携は、きっと他にも生かされる。クーポンだけではないはずだ。タイ人客～レストランをつなぐ位置にいて、いろいろ仕掛けることができるのが重要だ。

そしてすでにタイ人はインターネット上で商品を買う、という準備が整っている。Ｅコマースの需要が大きくなるにつれ、これから急激に伸びるネットでの商品購入について、タイ人向けのサイトを仕掛けていくことなど、すでにアイデアと構想は湧いてきている。クーポンサイトをきっかけにタイ人向けの市場に入り込んでいくつもりだ。