「北海道」ブランドが意外と人気！

早いもので今年もすでに９月。南国タイでは実感が湧きにくいが、９月半ばには、はやくも北海道の大雪山系で、例年初冠雪が記録される。一足早く食欲の秋を迎える北海道には、ジンギスカンやスープカレーなど名物が多いが、ここバンコクでは最近、北海道の名を冠したケーキ、アイスクリーム、チョコレートなどが、徐々に増えてきている。興味深いのは、個人経営の店舗だけでなく、タイの大企業も、北海道をスイーツのブランドとして注目している事だ。

　シンハビールで知られるタイ最大のビール会社「ブンロート・ブルワリー社」も北海道ブランドに着目したタイ企業のひとつ。

　北海道で牧場を運営し、レストラン経営、スイーツの製造販売をしている「ファーム・デザイン」と業務提携し、今年７月バンコク郊外にオープンしたショッピング・モール「ザ・ナイン」に「ファーム・デザイン」海外１号店をスタートさせた。サングラスをかけた牛がトレードマークで、一番人気は北海道チーズケーキだ。

　業務提携の話はブンロート社から「ファーム・デザイン」に持ちかけられた。北海道スイーツと「ファーム・デザイン」のクオリティの高さに関心を持ったブンロート社が役員自ら北海道へ出向き業務提携に至った。

「ファーム・デザイン」は、すでに２号店の出店が決まっている。場所はアソークに10月オープン予定のショッピングモール「ターミナル21」。酪農家である「ファーム・デザイン」海野社長は「25年前、北海道で牧場を始めることからはじめ、おいしい牛乳、おいしいスイーツを作ることに専念してきました。タイのみなさまにも、本物の北海道チーズケーキを堪能してもらいたい」と語る。今後も店舗は増えていく予定だ。

　同じく「ザ・ナイン」にオープンした「スムージーシークレット」は北海道ミルクを使ったシェイクショップ。そのロゴにもＨＯＫＫＡＩＤＯの文字が入っている。これもブンロート社関連の店舗。当社の北海道への関心の高さを感じる。

　北海道チョコレートをメインにした「メルト・ミー」はタイで日本食チェーンを展開するおなじみＯＩＳＨＩグループ創業者タン氏の奥さんが始めたお店。現在カフェと販売ブースを、バンコク市内及び周辺に７店舗展開している。

「メルト・ミー」には「北海道ホワイトマカダミア」「北海道ダークチョコレートフォンドュ」「北海道抹茶」といった名前のチョコレートが並んでいる。濃厚で滑らかな口当たりの生チョコレートがタイ人にも人気だ。

「メルト・ミー」は、テレビＣＭにもよく登場するＯＩＳＨＩグループ創業者のタン氏の人形が目印。今後、ＫＦＣのカーネル・サンダースのごとく街に増えていくかもしれない。

　タイ人に北海道のイメージを聞いてみると、やはり「雪」という返事が多い。北海道そのものを知らないという人もいるが、若年層、富裕層ほど詳しい傾向だ。タイ人にとってちょっとした憧れである白銀の世界のイメージと、タイで人気の高い日本食の相乗効果が、北海道スイーツへの好印象を後押ししている。また北海道は乳製品のイメージも強く、乳製品を多く使用するスイーツやアイスクリーム、カフェとはイメージ的にも相性が良い。「北海道ミルク」「北海道ソフト」という店舗もバンコクの主要デパートなどで見ることができる。

　伊勢丹では年２回「北海道物産展」を開いているが、今回８月25日から９月５日まで開かれた「北海道物産展」は特に盛況だったという。客の多くはタイ人で、伊勢丹の担当者、吉田氏によると、海産物とスイーツの売り上げが好調で、スイーツでは北海道土産の定番「白い恋人」で知られる石屋製菓の「白いバウム」と、札幌のお菓子店の「とろける生ドーナッツ」がタイ人に人気だったという。

　スイーツから広がりつつある北海道ブランド。スイーツに留まらず、大きく育って欲しいものである。タイから北海道への観光客誘致など、幅広い業種にも繋がっていくポテンシャルを秘めている。スイーツ人気だからといって、甘くみてはいけない。