日本に続け！スペイン風のバルの波～

今、日本では「バル」が人気だが、タイでも「バル」が少しずつ出始めている。　バルというのは、居心地よくお酒が飲めて、気取らずに食事もとれるところ。イタリアでは「バール」、スペインでは「バル」、アメリカではブルーパブやバーと呼ばれるもので、日本では一般的に「バル」と呼ばれている。　

　さて、バンコクでの「バル」はどういった店だろうか。　欧米人を中心に、すでに知られているバルと言えば、「タパス・カフェ」がある。ナナ駅を降りてすぐ、スクムビットソイ11の欧米の飲食店が並ぶ通りにあり、シーロムにも支店の「スパニッシュオン４」がある。２００６年にオープンした、スペイン式のバルだ。客はほとんどが欧米人だが、日本人も結構見かける。　

　店名にもなっている「タパス」は、小皿に乗った料理で、お酒をのみながら、つまみのように食べる。タパス・カフェのメニューはほとんどがこのタパスで、大きい皿に盛られたメイン料理はパエリアのみ。　

しかし、本場のバルとは若干違うかも知れない。例えば、店内はゆったりとしたソファ席が並び、照明や壁に飾られたアート作品など、かなりモダンなつくりになっている。壁や椅子などはスペインの国旗を連想させる色使いで、それに加え、ラテン系のＢＧＭが流れている。　

　スペインに馴染みのない人でも気軽に来られる工夫がなされている。値段もタパス一皿150バーツ前後、グラスワインも１杯100バーツと手ごろ。　

一方、最近、スクムビットのソイ33に、日本式イタリアンバールの店「ザ・ばーる」がオープンした。日本人夫婦の渡辺さんが経営している。　東京ではすでにバルやバールが流行っているが、バンコクにはまだそういったものがないことから、オープンを試みたという。　

　渡辺さんいわく、「日本で流行っているバルやバールは、料理や店内の雰囲気など、決して気取らず、料金も手ごろだけれども、なにかこだわっているもの（コンセプト）がどのお店にもあるところが共通点だと思います」とのこと。また、どのお店も、料理はお酒にあうものを揃えているのも共通点だという。　

　この「ザ・ばーる」では、主に日本人をターゲットにしている。タパスは日本人の口にあうものを提供し、日本人の30代、40代が共感できそうな70、80年代の洋楽、邦楽をＢＧＭにしているとのこと。店内の壁一面にワインの木箱が並んでいて、ワインがディスプレイされている。木箱で温かみを出し、ワインを楽しめる空間をイメージしたという。　

このように、「お酒とそれにあう料理」を提供するだけでなく、手頃な値段設定、内装やＢＧＭなどもターゲットにあわせて考慮し、総合的にお酒を楽しめる空間をつくっているのがバンコクのバルの特徴といえる。　　

　さて、このバルがバンコクでタイ人に受け入れられるのだろうか。　

「お酒を飲む」ということに関してはタイ人はネガティブなところがある。たばこと同じように「お酒＝悪」というイメージを持つ人も結構いる。　

　お酒が入るとケンカが始まる。拳銃で撃たれる。女性の取り合いが始まる、など。なかなかこういったイメージを社会全体で払拭するのは難しい。　

　日本では今の時期、テレビを見るとビールのコマーシャルが次々に流れるが、タイではお酒のコマーシャルはご法度。お酒の税率も上がり、「お酒を制限する」という流れはある。　

　また、昼下がりにグイと思ってセブンイレブンに行っても、お酒が買えない。販売時間が限定されているのだ。　それとは逆に、先進国は「楽しいお酒」は大歓迎という感覚があり、そういう「お酒が楽しめる」雰囲気にバンコクもなってくれればよいだろう。しかし、そのきざしはタイでも少しずつ見られる。　

例えば

　①タイ人の給料が上がっている。今では２万バーツほどの給料はあたりまえ。アフター５を楽しく過ごそうというスタイルもできてきて、友達といっしょに食事でもという余裕も生まれている。　

　②海外旅行がブーム。バーツ高によって、日本やヨーロッパに向かうタイ人も多い。普通の会社のＯＬも有給で海外旅行を考えるようになった。そして、その海外では楽しくお酒を飲んでいる人達と出会う。なるほど！こういう飲み方もあるのかと。　

　③バンコクにいる外国人がそういうものをつくりあげる。これは、我々、日本人でもそうだが、イタリア人なども在タイ者は多く、料理店のグレードは高い。外国人が先頭を切ってバンコクで盛り上げていくと徐々に変わっていくだろう。（編集部　Ｓ）